マルぼんと暮らす サイボーグ用務員さんの巻


 ヒロシが、あの漫画かラノベかギャルゲーのイラスト集かルナちゃんに「良い本だから光の速さで読んで感想を聞かせて」と押し付けられた謎の宗教本くらいしか読んだためしのないヒロシが、なんと新聞を読んでいました。それも、テレビ欄や4コマ漫画や人生相談や卑猥な言葉のならぶ週刊誌の宣伝以外の箇所を!


マルぼん「ヒロシが、あのヒロシが新聞を読むなんて! 明日は雪でも降るのではなかろうか!」


ヒロシ「実はそれが狙いなんさ」


 ヒロシが語ります。数日前に出会った、カナちゃんという女の子のことを。カナちゃんは生まれも育ちの微笑町。微笑町は「常夏もどき」と言われるくらい気候のよい町ですので、雪が降ったことがありません。生まれてこの方、ナマの雪を見たことがないカナちゃんは、「いつか雪に埋もれた微笑町を見てみたいものだわさ」と常々思っていました。しかし


ヒロシ「カナちゃんはね、親の都合でハワイに引っ越すことになったんだ」


 「結局見れなかったな、雪の微笑町」。落ち込むカナちゃんのため、ヒロシはなんとか雪を降らせてやろうと決意。以前、なんとなく新聞を読んでいた時、町中の人間から「町内愚か者ランキング上位のヒロシが新聞を読むとは珍しい。明日は雪でも降るんじゃないか」と罵られたことを思い出し、再び新聞を読み始めたという次第。


ヒロシ「実際、雪なんて降るはずないのはわかっている。わかっていても、僕は新聞を読まずにはいられなかったんだ。新聞すら読まない僕の馬鹿さ加減が、もしかしたら1人の女の子の夢をかなえることができるかもしれない。わずかな可能性にかけたいと思ったんだ」


マルぼん「ヒロシ……」


ヒロシ「まぁ、全部嘘なんだけど」


                                              つづく