マルぼんと暮らす(前編)


 微笑町では今年から、成人の儀式として男子は学校の裏にある断崖絶壁(高さ100メートル。日本の自殺の名所100選のひとつに認定済)からのバンジージャンプが行われることとなりました。特色としては、ロープのかわりにこよりが使われることです(死ななかったら成人したとみなされる)。そして、ヒロシたちがこの成人の儀式に挑むことに。ヒロシたちはまだ小学生ですが、微笑町では「その日その日が特別な日」という考え方なので、問題はありません。


ヒロシ「つまりは死ねということらしいです。マルぼん、そして今まで応援してくださいました皆さん、本当にありがとうございました。大沼ヒロシは遠いところへ旅立ちます。きっとそこには温かくて、飢えも悲しみもないことでしょう。それではさようなら」


マルぼん「まて。まてい。あきらめるのはよすんだ、少年」


ヒロシ「あきらめる以前の問題だよ。こよりでバンジーなんて!」


マルぼん「ここのツナマヨネーズがあるから、これを食べるんだ。これは『命ツナ』という機密道具なんだ」


 未来の世界に、多五作&ロドリゲスというコンビのアイドルがいるですが、彼女たちは歌を歌いながら1週間水の中で生活したり、ダンスをしながら硫酸のプールに飛び込んだりと、危険なパフォーマンスで話題をさらっていました。そんな彼女たちが、東京タワーを登りながらサイン会をすることになったのですが、さすがに命綱が必要になりました。でも、そう目立つ命綱をしたら、危険が売りのアイドルの面目まるつぶれ。かといって目立たないカスみたいな命綱を使ったら、さよなら現世よろしく来世。そこで開発されたのが、この『命ツナ』。


マルぼん「これを食べたら、身につけている命綱がこれ以上ないくらい強化される。たとえこよりでも、チェーンソでも切れないくらい強化されるよ」


ヒロシ「わーい。仲間たちにも食わせてやろう」


 ヒロシは『命ツナ』を持って外へと飛び出していきました。


                        つづく