マルぼんと暮らす


ヒロシ「これ、この漫画。『魔法少女・桜井ゴンザレス 縄文時代編』。この漫画、クラスでえらい受けているんだけど、僕はクスリとも笑えないわけだ」


マルぼん「まぁ、人それぞれ笑いのセンスは違うわけだから、それは仕方ないのではなかろうか」


ヒロシ「みんながおもしろいと言っているものを、僕1人だけがおもしろく感じていない。それが問題なんだよ。なんとかこのつまらない漫画をおもしろく感じることができない?」


マルぼん「『爆笑ブックカバー』。このブックカバーをつけた本は、どんなにつまらなくてもおもしろく感じてしまうようになるんだけど……」


 ヒロシは『爆笑ブックカバー』を『魔法少女・桜井ゴンザレス 縄文時代編』の一巻につけて、読み始めました。


ヒロシ「あひゃひゃひゃひゃ! こいつはおもしろい!」


マルぼん「あーでもなー、あまりそいつの力に頼らないほうがいいんだよなー」


『爆笑ブックカバー』をつけた本を長期間読み続けると、ブックカバーの力が脳を侵してしまいます。脳が侵されたら、『爆笑ブックカバー』がなくても、つまらない本をおもしろいと感じるようになってしまうのです。


マルぼん「ようするにだ。笑いのセンスを自分の意思とは関係無しに、無理やり変えられてしまうんだよ。それって悲しいことじゃないか


ヒロシ「別にいいよー。みんながおもしろいと言うものを自分もおもしろいと感じることが大切なんだ。あはははははは。あーおもしろかった。次は二巻だ。『爆笑ブックカバー』をつけてっと。あひゃひゃひゃ!」


マルぼん「ヒロシときたら」


 二時間後。


ヒロシ「あひゃひゃひゃひゃ!」


マルぼん「ヒロシのやつ、まだ『桜井ゴンザレス』の二巻を読んでいるぞ。いくらなんでも長すぎる気が。あれ? ここにあるのは『桜井ゴンザレス』の二巻」


 ヒロシは『桜井ゴンザレス』二巻とまちがえて、別の本に『爆笑ブックカバー』をつけて読んでいたのです。


マルぼん「おい、なにを読んでいるんだ。ちょっと見せろ。なになに『まんが・世界のあんな拷問こんな拷問』」


ヒロシ「あひゃひゃひゃ。拷問おもしれえ」


 道を歩いていた会社員の女性(46)に刃物で斬りかかったとして、微笑警察署は6日、殺人未遂の容疑で町内に住む小学生を補導した。取調べに対し、小学生は「人の苦しむ顔を見るのが、あひゃひゃひゃと笑えておもしろく、是非ともまた見たかった。モウシワケナイコトヲシタ。イマハハンセイシテイル」と容疑を認めているという。
                                       (微笑町新聞より抜粋)