床屋へ行きました。


 混んでいたので、待合室で雑誌とか読んでいると、客の一人と店主の会話が聞こえてきました。最初はどうってことない世間話だったのですが、ネタが尽きてきたのか、中学生になる子供の成績が伸びないことや、兄弟と喧嘩ばかりしているという悩みとその愚痴を、苦笑まじりに話しはじめました。


 すると店主


店主「うちの子供たちは最高ですよ!」


 店主の3人はとても兄弟仲がよく、


 親思いで、


 みな勉強スポーツなんでも得意で、


 長男は超有名国立大学へ一発合格して、


 他の子供たちは教師や友達に恵まれて、


 とにかく言うことなしというのを、すごく得意げに語り始めたわけです。子供のことで悩んでいるお客さんは面白いはずもなく、口数が少なくなり、相槌もしなくなり、表情もなくなりました。店主、自分の失態に気付くと、なにか雰囲気を変える秘策はないかと考えたようで、急に僕のほうを見て、


店主「そういえば、どぶろくくんの髪の毛薄くなったね」


 いきなり僕の頭髪いじり開始。そこに起死回生の策を見出したか! 


 Q.気になる僕の対応は?


 A.無視。


 この対応のせいなのか、店内に笑顔が戻ることもなく、その後の散髪も終始無言でした。