その後のマルぼんと暮らす

 マルぼんとヒロシが町を歩いていると、目の前に牛車が止まりました。牛車から顔を出すのは、町一番の金持ち・金歯。


金歯「おう、2人とも。相変わらず幸薄そうな顔をして」


ヒロシ(相変わらずうざい金持ちだ)


美女「金歯ちゃん、お友達?」


 金歯に続いて、牛車から顔を出したのは見たことないような美女。うろたえまくるヒロシ。


ヒロシ「え、え、え」


金歯「紹介するでおじゃる。朕の姉である、八重歯」


八重歯「はじめまして」


ヒロシ「は、はじめましてええ!」


マルぼん(ヒロシ、堕ちたな)


 案の定、ヒロシは八重歯さんにぞっこんで、起きているときも八重歯さん、寝ているときも八重歯さん、メシのときも八重歯さん、風呂のときも八重歯さん、生まれた子供に「八重歯」と名づけるほど八重歯さん、八重歯という名前に改名したいとごねて親に「あんたって子は、あんたって子は!」と暴力を振るわせるほど八重歯さん、とにかく四六時中「生きて八重歯さんと添い遂げたい添い遂げたい」とうるさいのです。


マルぼん「あのなあ、金歯コンツェルンは、微笑町の社会人の98%が関連企業関連会社に勤めているほどの巨大財閥だぞ。もちろん、キミの父親も。八重歯さんは、そんな巨大財閥のお嬢さま。それに比べておまえは、どこの馬の骨ともわからない男とどこの馬の骨ともわからない女との間に生まれた、どこの馬の骨ともわからない小学生だ。釣り合いがとれるわけないだろう」


ヒロシ「それをなんとかするのがキミの役目だろう。なんのためにメシを食わせていると思ってんだい!」


マルぼん「ふう、やれやれ。仕方ないな。『高嶺の孫の手』。ふつうに暮らしていたらけして手が届かないような
存在でも、この孫の手をもって『アレがほしいよう』とひたすら念じれば、きっと手に入る」


ヒロシ「ようし、あぶらうんけんそわかなんたらかんたらぶつぶつぶつ」


マルぼん「その調子でひたすら念じろ。そしたら八重歯さんは、キミ程度の人間でも手の届く存在に……」


パパさん「会社つぶれた!」


 色々あって、金歯コンツェルンは崩壊。高嶺の花だった八重歯さんはヒロシにも手が届く存在になり、微笑町の社会人の98%は昼間からなにをするでもなくぶらぶらするようになりました。例外にならなかった我らが大沼家でも、雑草や木の枝をおいしく食べる方法や、石をしゃぶるだけで飢えを凌ぐ方法を、日夜考えています。


 マルぼんは『高嶺の孫の手』の効果は絶大だと思いました。