「信じれば夢はきっとかなう話」改めまして「未来アタッカー哲郎」 第3話


前回


あらすじ
味噌汁の中から「はわわ」という声がしたかと思うと、お椀の中から女の子がでてきた! びっくりした権田哲郎だったが…


哲郎「な、なんだ。なんなんだ、おまえ!」


女の子「私? 私は…私は、えっと」


哲郎「まぁ、いいや。うちは両親が仕事で海外に行っているし、家族は妹(義理)だけだから、一緒に住もう」


女の子「ほ、ほんとうですか?! ありがとうございます!」


哲郎「いいってことよ。がははは。がはははは」


 以上、味噌汁の入ったお椀からでてきた人間の右腕によって顔を絞められている権田哲郎が、苦しみの果てにたどり着いた夢幻の境地でみた幻でした。人の夢と書いて、儚い。人はなぜ夢をみるのか、それは誰にもわかりません。では、現実パート再開。


「ぐご…ぐごごごっ」


 味噌汁の入ったお椀から飛び出してきた人間の腕に、アイアンクローをかまされる権田哲郎。その苦しみの声はうなり声の域まで達し、さらには産卵中の海がめの鳴き声の域までレベルアップしました。締め上げられている顔色は人類の肌の色とは思えないほど青く変色しています。例えるなら、グフです、グフ。権田哲郎はグフ人間なのです。


「ああ、哲ちゃんが危ない!」


 息子の異変に気づいた、おとうさんとおかあさん。おかあさんが、腕が飛び出しているお椀に駆け寄って、懸命に話しかけます。


「やめて。もうやめて。このままじゃ、哲ちゃんの顔がみるも無残に変わり果ててしまうわ」


「しかしでござるな、ママうえどの。拙者は親の悪口を言う輩は許せんのでござるよ!」


きちんとお椀の中から返答がありました。お椀に潜むアイアンクロー氏(仮名)は、どうもおかあさんと知り合いのようです。


「いっそのことこのままアレしたら、拙者もこれから大助かりでござる! ママうえどのたちも、教育費をパチンコ代とかに使えるでござる」


「やめろやー!!」


 ここでおとうさんがキレた。持っていたフォークで、お椀から飛び出していた腕を思いっきり刺す! これでもかと刺す! 大嫌いな上司の顔を思い浮かべながら、刺す! ひたすら刺す!


「うへっ!」


 痛みのせいで、権田哲郎の顔から手を離してしまう腕。おとうさんは、お椀を手に取ると、思いっきり床に叩きつけました。お椀からは、味噌汁と、具の豆腐やネギと、腕にフォークが刺さったママの全裸の男が1人飛び出して散乱し、床をものすごい勢いで汚していきます。男は床に頭をしこたま打ち付けて、「ううん」とか言いながら意識を失いました。全裸ですので、見えてはいけないところもバッチリなのですが、私は描写する気はありませんので省略。


「哲ちゃん!」


「哲郎! 我が息子よ!」


 アイアンクローからようやく開放された権田哲郎は、ぐったりとして床に倒れこんでいました。そんな息子に駆け寄る、やさしいやさしい、海よりも深い愛情を持ったおとうさんとおかあさん。


「ふぬぅ……」

 
 権田哲郎、意識はあるようです。


「ううう。いったいこれはどういうことなの、おかあさんおとうさん」


 アイアンクローショックのおかげで、「両親を無視する」という思春期の誓いを忘れてしまった権田哲郎。素直な気持ちでおとうさんとおかあさんに尋ねます。幼かったあの頃のように……「子供はどうしたら生まれてくるの? コウノトリが運んでくるとか、キャベツの中から発生するとか、そういうアヤフヤなカンジではない説明をしておくれよ」と親に尋ねたあの頃のように……。


「味噌汁のお椀に潜んでいたバカが、とち狂っておまえを攻撃したんだよ」


「バカ……?」


 権田哲郎は、全裸で倒れているアイアンクロー氏に気がつきました。


「俺の顔を締め上げたのは、こいつなの!? しかもお椀の中に潜んでいたって?! どうして」


「『哲郎氏を驚かせるでござる』とか言って、自分からお椀の中に生まれたままであるその身を潜めたんだ。迷惑な話だろう」


「いくら忍法だからといって、味噌汁の入ったお椀に生まれたままの姿で潜むなんて非常識よねえ」


「忍法…ということは、こいつは」


「忍者だよ。おまえに仕えるためにやってきた、忍者」


 次回は、なぜ忍者が権田哲郎に仕えなければいけないのか、その説明を私の初恋の話などを交えてお送りする予定です。