カネカネキンコ 愛の劇場 第3話


前回


「どうしよう。俺も…俺も女子小学生を見たら、抱きつきたくなってきた」


 女子小学生に抱きついて逮捕された敷田さんは退職のはこびとなり、彼が担当していた5人の入居者は、男性職員5人が分担して受け持つことになった。職員5人のうちには、倉井も含まれていた。

 
 それから一ヵ月後。冒頭のようなセリフを吐いたあと、「風になりたい」と言い残して倉井は休職した。知り合いの心療内科医に泣きついて、診断書を書いてもらったそうだ。


 敷田さんから託された入居者を含めて、倉井の担当していたのは全部で6人。やはり相当ハードだったようである。


「井村さんの担当だけど、頼まれてくれないか」


 井村さんとは、倉井が敷田さんから受けついだ入居者さんだ。引き受けたら、俺の担当入居者も6人になるわけだが、「いけるんじゃなかろうか」とか俺は思っていた。


 俺が元から担当している入居者は、比較的楽な人が多い。井村さんも、頭もはっきりしているし、多少糖尿の気があること以外は体調にも異常なし。家族も頻繁に訪れてきて、協力してくれている。本人が納得して入居しているので、問題なんかもほとんどない。新しい職員が来るのも、そう遠いことではないはずだ。


「いいですよ」


 点数稼ぎの意味もこめて、俺は引き受けた。


 これがまずかった。


 非常にまずかった。俺は知らず知らずの間に疲れていたようなのだ。そしてその疲れは、ひそかに俺の体と心を蝕んでいたのだ。


 ある日俺は、仕事の帰りに道ですれ違った小さな女の子から目が離せなくなっている自分に気づいたのだ。