町内ではムードメーカー的な役割を担っている、近所のおばあさんが最近元気がありません。

 今日、そのおばあさんと道でばったり会った僕は、かける言葉も見つからず、とりあえず「元気をだしてください」と話かけたんですが、その安易な一言がおばあさんのなにかをぶっ壊してしまったらしく、僕はおばあさんの悩みの種である「我が子との確執」の話を、寒空の下で延々聞かされることになってしまいました(その話の内容は諸般の事情により割愛)。

 おばあさんは僕に「どうすれば強く生きられるかを聞いてきました。

 自分の四分の一程度しか生きていない僕にそんなことを尋ねるなんて、おばあさんはよほど切羽詰っているようです。

 どう答えてよいかわかならくなって混乱した僕は、ふいに頭にうかんだ「美味しんぼ」にでてきたあるフレーズをそのまんまパクっておばあさんに話してしまい、しかもおばあさんは「気持ちがスッとした」と元気を取り戻してどこかへ行ってしまったんです。

 というわけで今日一日、僕は、おばあさんへの申し訳なさと「美味しんぼ」の意外な力への驚きで、なんともいえぬ気持ちで過ごしたのでした。