『昔、京都の近くの山奥に、平和な村がありました。その村の村長には美しい娘がいて、彼女のことを愛する村の若者A・Bもいました。娘は、若者Aと結婚し、幸せに暮らし始めました。ところがある日、村の財宝を狙う盗賊団が現われ、村長と娘を人質に財宝を要求したのです。若者Aと会いたい娘は、盗賊の頭目に「自分だけを助けてくれ」と申し出ました。頭目は、「オレと一夜をともにしたら解放してやろう」と条件をだしました。娘は村長に相談しましたが、村長は「おまえのやりたいようにやれ」と言うだけ。娘は、結局、頭目と一夜をともにして、無事に解放されました。若者Aは、娘が頭目と一夜をともにしたことにショックを受け、おお暴れの末、首を吊って自ら命を絶ってしまったのです。若者Bは、自分の母親に促され、傷心の娘をなぐさめて、その心をつかむことに成功したのでした』  今日のヘルパー学校では、上の話を読み「好感度がもてるヤツランキング」をつくるというものでした。

 女性陣は「娘」を、男性陣は「若者B」を1位に選んでいたようですが。、僕や青シャツさん、そして初登場のオヤジさん(とても気さくでボケとツッコミの加減をもっている50代男性)は、あることに気付いたのです。

 それはこのお話の『盗賊と娘』というタイトルでした。

僕「このタイトル……まるで、盗賊が主人公で娘がヒロインみたいじゃないですか?」
青シャツさん「そうだね。よく読んでみたら、盗賊は約束をきちんと守っているいいヤツだし」
オヤジさん「でも盗賊が主人公ってのはな。実は覆面とか被っていて、正体は若者Bなんじゃない? 娘の気を引くため、自作自演をしようとしていたりして」
僕「盗賊団のメンバーは、若者Bを慕う村のチンピラ(オリジナルキャラ)ですね」
青シャツさん「そもそも、なんでこんな山奥の村に財宝が?」
オヤジさん「京都の近くにあるってのがポイントかも」
青シャツさん「天皇家の隠し財産を管理していたとか」
全員「それだ!」
僕「財産の場所を知っているのは村長だけに違いないですよ」
オヤジさん「なるほど。盗賊が……いや、若者Bが村長もさらった理由はそれだな」
僕「若者Bが財宝のことを知っていたのは、たぶん、若者B母が昔、村長の愛人だったとかですよ」
青シャツさん「女と金を狙う、壮大な作戦。若者B……! くやしいけど、デカい!」
僕「若者Aは?」
オヤジさん「普通に死んじゃっただけじゃない?」
青シャツさん「うん」
僕「でも、ただの自殺とは思えませんよ。裏がありそう」
オヤジさん「娘と若者Bがグルだったとか」
青シャツさん「娘は最初から若者Bとできていたんですね。財宝を狙う作戦のカモフラージュで、娘は若者Aと結婚したんだ」
僕「若者A、酒も賭け事もしない、仕事だけが趣味の素朴な人だったんでしょうね。好きな女に騙されているとも知らず……」
オヤジさん「若者Aを自殺に見せかけて殺したのは、若者Bと娘だな」
僕「おお暴れしたというのも、2人の偽装工作ですね。若者Aが暴れるわけがない」
青シャツさん「村長も、おそらくは始末されてるでしょう」
僕「若者A……あんまりだ……!」
オヤジさん「実は、若者Bは、若者B母と村長との間にできた子供とか」
青シャツさん「近親相姦!?」
僕「僕たちは、どうやらとんでもないヤマに足を突っ込んでしまったようですね」

 そして、僕たちがだした好感度ランキング。



1・若者A(純情さにつけこまれて殺害された。被害者)
2・村長(使命のために命を落とす)
3・若者B母(一連の事件の原因をつくった)
4・娘(多くの人を犠牲にし、財宝を求めた)
5・若者B=盗賊の頭目(恐るべき策士。サイコパス
6.該当者ナシ。


 これを発表したら、放課後講師に呼び出されました。