近所に住んでいるAさんが訪ねてきて


「Bさんの家へ行ったけど、呼び鈴押しても出てこないんよ」


 Bさんは、近くにあるとても大きな家(門や蔵、高い塀がある)に1人で住んでいるおばあさん。Aさんの話によると、Bさんは「最近体調がすぐれない」と言っていたとか。もしかしたら、家の中で倒れているのかもしれない。心配で心配でしかたないけど、門はしっかりと閉じられていて開けることはできない。そこでAさん、考えた。


「ハシゴを使って塀を乗り越えて、Bさんの家の敷地内部に入る」


 でもけっこうお年を召しているAさんはハシゴの昇り降りに自信が持てない、そこで近所のヒマそうな若い人に代わりをやってもらうことにし、私に白羽の矢がたったというわけです。


 正直いやでしたが、思うところあり、引き受けることにした私。ハシゴを抱えて、Aさんと共にBさんの家の前まで。早速、塀にハシゴを立てかけて、昇り始めます。


私「Aさん、ハシゴが倒れないように抑えていて欲しいのですが」


 返事はなし。Aさんは姿を消していました。夕方、人様の家にハシゴを使って侵入しようとしている男が、この地球の上に1人。


 どうみてもワシ、泥棒やないかい!