マルぼんと暮らす おでん人間町を行くの巻
ヒロシの外国の鉱山への就職が決まってしまったため、ここ最近のマルぼんは1人です。今日もさみしく、部屋で仏像など木彫りしていたのですが、懐かしい顔が訪ねてきました。
マルぼん「ヒロシ!」
ヒロシ「おひさしぶり」
ヒロシです。ヒロシが帰ってきたのです!
ヒロシ「なんとか逃げ出してこれたんだ。それはそうと、マルぼんにお願いがあって」
マルぼん「なんだい」
ヒロシ「好きな人ができて……どうしてもその人と結ばれたくて」
マルぼん「ちょっと詳しく話してごらんなさいよ」
マルぼん、鼻息を荒くして興奮。なぜなら、ラブ展開が大好きだから。一時期は実家で親が作っている米に『愛米(ラブコメ)』と名づけて売り出し、見事に失敗して多額の借金を背負っていたほどです。
ヒロシ「好きな人ってのは、この写真に写っている人なんだけど」
写真にはが眼鏡をかけた初老の女性が写っていました。
マルぼん「この女性、見覚えがあるぞ。たしか……金歯ンとこのママさんじゃないか!」
ヒロシ「そう、金歯のやつの母親なんだ。諸事情があって、めっさ好きになってしまったんだYO!」
マルぼん「たしか旦那さんが亡くなって今は独身らしいから、問題はないといったらないんだけどまさか
友達の母親を好きになるとはなぁ」
ヒロシ「恋に身分は関係ないんさ」
マルぼん「ま、そうなんだけどさ。うん? 金歯のママさんといえば、たしか……」
ふと思い出したことがあり、持っていた雑誌をパラパラとめくるマルぼん。
マルぼん「あった、この記事『金歯のママさんのハートを射止めるのは?』」
記事の内容は次の通り。『夫に先立たれ、息子は勘当状態の金歯のママさん。ものすごい財産がその手にあるわけですが、その財産を他人に譲ると言い出した。「もし私のめがねにかなう立派な方が現れたら、その人にすべての財産をあげてもいいわ。さぁ、私をとろとろにしてしまう自信がある方、どんどんおいでませ!」』
マルぼん「これか、きみの目的は」
ヒロシ「金歯一族の財産が手に入ったら、どんな贅沢も酒池肉林も思うまま。楽してたくさんのお金を手に入れることは、僕の長年の夢だからね! この夢をかなえて現実のものとするためにも、金歯の母親を、オトす! 金歯の母親のめがねにかなう人間となる!」
ヒロシに乞われるまま、マルぼんは惚れ薬を出しました。この薬を飲んだ人は気絶し、目覚めて最初に見たものを好きになってしまうのです。マルぼんとヒロシは金歯邸へ侵入し、金歯のママさんに惚れ薬を飲ませました。気絶する金歯のママさん。
金歯のママさん「う〜ん、むにゃむにゃ」
ヒロシ「お、そろそろ目が覚めるぞ」
金歯のママさん「おはよう……」
ヒロシ「よし、今、僕を見たぞ!」
金歯のママさん「……なんという素敵な」
ヒロシ「よしよしよし!」
金歯のママさん「なんという素敵なめがね! レンズの光具合といい、フレームの色合いといい、これ以上のものはないわ!」
金歯のママさん、かけていためがねを外すと、恍惚とした表情でほお擦り開始!
ヒロシ「えええ!?」
マルぼん「惚れ薬の効果が絶大すぎた! 起きて最初に目の前にあるもの、つまり自分のめがねに惚れてしまったんだ!」
金歯のママさん「もう素敵素敵! 財産も私の体も、全部あげちゃう! あふん!」
ヒロシ「ええええ!?」
その後の展開は早かった。金歯のママさんは本当に、自分のめがねに全財産を譲り渡すように手続きを済ませてしまったのです。こうして金歯のママさんのめがねは、大金持ちになりました。
ヒロシ「とほほほ、僕の夢が。楽してたくさんのお金を手に入れるという夢が」
マルぼん「めがねにかなったんだよ」
ヒロシ「え」
マルぼん「金歯のママさんのめがねにかなったんだ。キミの夢が」