マルぼんと暮らす 教えて! 好きと嫌いの方程式の巻


 マルぼんが家で「俺はなんのために生まれ、なんのために死んでいくのだろう」と自分を見つめなおしていると、電話が鳴りました。でてみると、地元警察からでした。「ヒロシくんが電車のなかで割腹自殺を図ろうとしたところを保護されました。保護者の方、すぐに来てください」とのこと。ママさん&パパさんに連絡をいれると、とるものもとりあえず、警察署へと急行するマルぼん。


警察官「割腹自殺を図ったものの、意気地がなかったらしく、大事には至りませんでした」


ヒロシ「ざんねんむねん」


マルぼん「なんだって電車の中で割腹自殺なんかをしようと?」


ヒロシ「絶望したんだよ。21世紀にさ」


マルぼん「ほうほう」


ヒロシ「ある駅でね、おばさんが1人、乗ってきたんだ。体の悪そうな。それなのに、誰も座席を譲ろうとしなかったんだよ。電車に乗り合わせていた連中は、譲り合いの精神をカケラも持っていたなかったんだ。そのことに絶望したんだ。だから僕は、人々に譲り合いの大切さを教えるべく、この身を犠牲にしようと決意」


マルぼん「高僧が世の無常を世間に訴えるべく即身仏への道を選ぶのと同じノリか」


ヒロシ「みんなが譲り合いの精神を持つようになる機密道具だしてー」


マルぼん「『精神蝋燭〜ゆずのかおり〜』。この蝋燭に火を点すと、溶けると同時にゆずのかおりがする。そのかおりを吸った人は、譲り合いの精神が芽生えるんだ。とりあえず、この取調室をゆずのかおりで満たしみよう」


 ゆずのかおりが充満した頃、マルぼんの連絡でママさんがやってきました。少し遅れてパパさんが。


警察官「ようやく保護者のかたが来てくださいましたね。さぁ、ヒロシくんを引き取ってください」


ママさん「私はいやよ。新しい生活があるんだから」


 年下の男性と新しい生活をはじめているママさんが、言いました。


パパさん「俺だっていやだね。今の彼女が子供嫌いなんだよ。電車で割腹自殺を図る子供なんてなおさらだ」


 年下の女性と新しい生活をはじめているパパさんが、言いました。


ママさん「あなたが」


パパさん「おまえが」


2人「「ヒロシを引き取りなよ」」


 マルぼんは『精神蝋燭〜ゆずのかおり〜』の効果は絶大だと思いました。