マルぼんと暮らす 京都コケティッシュ天狗伝説連続殺人事件(推理編)


「なぜか永遠に使えるあぶら取り紙」をアホほど使った結果、顔のテカりだけでなく、心の奥底にあったギラギラした野望まで取りさられたヒロシ。「野望を失った男は、もはや男ではない」と言った歴史上の人物がいたそうですが、ヒロシの場合は憑き物が落ちたようになり、その軽く解脱したっぽい雰囲気に、「ちょっとした聖人みてえだ」と動物やご近所の年寄りを魅了。家の前には大量の供え物が置かれる始末。それを見ていたルナちゃん(某新興宗教の熱烈な信者。ホーリーネームあり)は「もう! ヒロシさんてば失礼しちゃう! ぷんぷん!」とご機嫌ななめ。ヒロシをこてんぱんにしてやろうと決意したのでした。


ルナちゃん「ヒロシィィィィィィ!」


  駅前にある大きな樹の下に座り、周囲にいる動物や一部の年寄りたちにそれはそれはありがたいお話をしていたヒロシに、ルナちゃんが怒鳴りました。


ヒロシ「おや、あなたはたしか……ルナちゃんさん」


ルナちゃん「あたいが持っているこれが、なにかわかるかヒロシ!」


 ルナちゃんは右手に注射器を持っていました。中身は子供の手の届かないところに保管しておかねばならない……いや、むしろ大人の手の届くところに置いておくのもマズいような液体です。


ルナちゃん「こいつが1滴でもかかったヤツは、肉体という名の腐りきった呪縛から魂が解き放たれ、真の意味の自由を得ることができるのよ(要約すると『死ぬ』)自由になりたくなかったら、その宗教キャラを捨てな!」


ヒロシ「愚かな。愚かな」


 ヒロシに迫るルナちゃん。動物たちが、老人たちが、まるで自ら盾になるかのように、ヒロシの周りを取り囲みました。「ヒロシさまに手は出させねえズら」


ルナちゃん「愚かな連中め。こうなれば、貴様らから自由にしてくれる」


ヒロシ「この人たちに手をだしてはいけませーん!」


 ヒロシ、ぶつぶつと念仏を唱え始めました。するとどうでしょう。


ルナちゃん「ぐむむむぅ」


 ルナちゃんは耳から血をだして苦しみ、その場に倒れてしまったではありませんか。ヒロシが人々と守ろうとして不思議な力を発揮したという話は瞬く間に広まり、彼の聖人っぽい評判はうなぎのぼりとなったのでした。


                                                                                                つづく