マルぼんと暮らす


「命あるものは皆 自由という名の翼を持つ鳥である」


ヒロシ「ヨーロッパの詩人・メルシー・A・ボンジュール(1493〜1503)の言葉さ。僕はこの言葉にえらく感動して、『そうか、僕にも翼があるんだ。空を飛べるんだ』と思って、2階の窓からの飛行を試みた」


マルぼん「首尾は?」


ヒロシ「左足の骨にひびがはいりました。いてえ、いてえよぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


マルぼん「やれやれ」


ヒロシ「この痛みから解放してくれるのなら、あらゆる富と名誉をくれてやる〜」


マルぼん「富も名誉もいらないけれど、同じ部屋に住んでいる人が悲痛な叫びをあげつづけているのはいやだから、なんとかしてやろう。『ひび機』。この機械は、ありとあらゆるひびをなおしてしまう機械。瀬戸物にはいったひびであろうが、骨に入ったひびであろうが、なんでもなおしてしまうんさ」


ヒロシ「わーい、さっそく僕の足のひびを」


マルぼん「あ、やばい。間違って自爆スイッチを押しちまった」


ドカーン


ヒロシ「ううううう」


マルぼん「ヒロシがえらい重傷だ!」


ママさん「ヒロシ! 大丈夫なの、ヒロシ!」


パパさん「ヒロシが大変だって!?」


マルぼん「あれは1年前、ママさんと大喧嘩して家出したパパさん! ヒロシの悲報を聞いて駆けつけてきたのか!」


ママさん「あなた……来てくれたのね」


パパさん「当たり前だろ。家族の一大事だ」


ママさん「やさしいのね。やさしいのね」


パパさん「俺を、許してくれるかい」


ママさん「もちのろんよ」


 ひしっと抱き合うママさんとパパさん。もはや母と父ではなく、女と男。メスとオス。


ヒロシ「うううう。ぐふっ」


 マルぼんは、ひびの入っていた夫婦仲までなおしてしまった『ひび機』の効果は絶大だと思いましたとさ。