マルぼんをじらす


ヒロシ「今日は一ヶ月前から楽しみにしていたことがいよいよあるんだけど、なんか気分がのらない。今日という日を待っていたこの一ヶ月は、じっとしているだけでもワクワクして晴れやかな気分だったのだけれど、そのワクワクな時間が終わってしまうことが悲しいよ」


マルぼん「『旅行は準備をしている時が一番楽しい』という人がいるけど、それと同じだな」


ヒロシ「ふぅ」


マルぼん「ようするに『楽しみにしていること』が先延ばしになれば、キミの楽しい時間も増えるわけだ。『スケジュール先延ばし手帳』。この手帳に『先延ばししたいこと』『先延ばしする期間』を書き込めば、どんなスケジュールでも先延ばしすることができる」


ヒロシ「よし、いっそのこと半年くらい先延ばしにするか。……よし、記入完了。これで半年はワクワクできるわけだ」


マルぼん「ところで、今日起こるはずだった『楽しみにしていたこと』ってなに?」


ヒロシ「ルナちゃんとのデートだよ」


 30分後、ルナちゃんの親から『都合が悪くなったので、今日のデートは取り消してほしい』という電話がありました。かなり都合がわるくなった様子で、ルナちゃんはとんと見かけなくなりました。半年後、ルナちゃんの信仰している宗教の施設から、たくさんのやせ衰えた人々が発見されるという事件が発覚。発見されたのは、ルナちゃんをはじめとして皆、信者たちでした。その宗教の関係者は、警察の取調べに対し『虐待ではない。あの施設にいた信者は皆、悪魔が取り付いたので、それを打ち払うために不浄な食べ物を与えなかっただけだ。信者の家族たちも同意の上だ』と供述。発見された信者たちは皆入院中。


 ルナちゃんとのデートを半年どころじゃないくらい先延ばしにしてしまった『スケジュール先延ばし手帳』の効果は絶大だと思いました。