マルぼんと暮らす


ヒロシ「キビシー! 残暑、超キビシー!」


マルぼん「うちは冷房ないからね、つらいやね。そんなときはこれ! 『冷房うちわ』。一見ただのうちわだけど、扇いで見ればあら不思議。クーラーばりの涼しさが!」


ヒロシ「なんだよーそんないいもんあるならとっとと出せよー。ではさっそくー」


『冷房うちわ』で自分を扇ぐヒロシ。


ヒロシ「特別に涼しくもないけれど」


 ピンポーン


マルぼん「だれか来たね」


ヒロシ「はい、どちらさま」


 玄関の扉越しに来客と話をするヒロシ。


配達員「お荷物を届けにきましたー。着払いですー」


ヒロシ「(着払い……まずい、銭なんてないよ)。すンません。いま、ちょっとお金がありませんので、また後でお願いできませんでしょうか」


配達員「……了解しました。って、うわ! うわー!」


 配達の人が叫び声をあげました。マルぼんとヒロシが扉をあけると、複数の警察官が男を取り押さえているではありませんか。


警察官「こいつは配達員を装って民家に侵入し、住人を殺して喰って体の一部を記念に持ち帰る犯罪者なんです」


ヒロシ「なんて猟奇の塊! というか、すぐ扉を開けていたら、今頃僕はこいつの胃の中……ひょえー背筋が凍るよー。……うん? 背筋が凍る? もしかして……」


 と、そのとき、窓をぶち破って包丁が飛んできました。飛行包丁はヒロシの鼻っ柱スレスレのところを通過すると、ものすごい勢いで壁に突き刺さりました。


少年「すいません! 新感覚のスポーツを作ろうと、ボールの代わりに包丁の投げあいをしていたんです。力をこめて投げすぎてしまいました!」


ヒロシ「あと少しで顔に刺さるところだった! ひょえー背筋が凍る……あれ」


警察官「たいへんです。この家の下に、いつ爆発するかわからない不発弾が埋まっていることがわかりました!」


ヒロシ「いつ爆発するかわからない爆弾の上に、何十年も住んでいたなんて背筋が凍る……やはりそうか。マルぼん、『冷房うちわ』は扇ぐと背筋が凍るようなできごとばかりが起こって、それで涼しくなるという機密道具だな」


マルぼん「ばれた?」


ヒロシ「そんな道具はノーサンキュー。もういらないよ。ほら、返す!」


マルぼん「ちぇ」


ヒロシ「あ。待って、うちわになにか書いてあるよ。『ヤンデレ社』だって」


マルぼん「『ヤンデレ社』って、未来の世界の機密道具レンタル会社だ。あ、思い出した。『冷房うちわ』はヤンデレ社からレンタルしていたんだ……いつごろ借りたっけ」


ヒロシ「借りた日が、おととしの今頃になっているよ」


マルぼん「……」


 後日送られてきた延滞料金の請求書を見たマルぼんは、背筋を凍りつくほどの恐怖に襲われることになります。マルぼんは、関係のない人にまで効果がでる『冷房うちわ』の効果は絶大だと思いました。