マルぼんと暮らす


ナウマン象「今日は貴様らにいいものを見せてやろうと思い、わざわざ足を運んできた」


ヒロシ&マルぼん「うぜーガキ大将うぜー」


ナウマン象「みろ。大学のときの先輩が安値で譲ってくれたエアギターだ。そんじょそこらのエアギターじゃないぞ。ブランド物なんだ。しかも馬鹿には見えないという特性がある。俺様は当然見える」


 ナウマン象は馬鹿だったので、マルぼんはエアギターについて色々教えて差し上げました。


ナウマン象「ギー! ギー! ギー!」


 人の家で発狂するナウマン象。「神よ仏よ」と小一時間ほど発狂したあとなんとか落ち着いたナウマン象は、マルぼんに泣きついてまいりました。


ナウマン象「エアギターうまくなって、俺様をだました大学の先輩を見返して土下座さしてえよ」


マルぼん「『フリかけ』。一見ただのフリかけに見えるけれど、このフリかえを長期間にわたって摂取し続けると『ふり』がうまくなる。たとえば勉強しているふり……仕事をがんばっているふり……。ギターをひいているふり……ようするにエアギターもうまくなるわけだ」


ナウマン象「恩にきるぜ!」


 ナウマン象は『フリかけ』を一か月分ほど持って帰宅しました。


ヒロシ「あ。さっきの『フリかけ』、中身は商売に使おうと思って密かに入手した覚せい剤だよ。いい隠し場所になると思って、中身を全て入れ替えたんだ」


マルぼん「そいつは大変だ」


 マルぼんとヒロシが急いでナウマン象のところへ向かうと、ヤツは『フリかけ(中身覚せい剤)』を馬鹿みたいに摂取していました。


ヒロシ「おい、大丈夫か」


ナウマン象「ヒロシか。たいへんだ。虫が、虫が、虫がたくさんいるんだ。捕まえなきゃ。捕まえなきゃ」


 虫なんかいないのに、部屋で虫取り網を振り回すナウマン象。


マルぼん「エア虫取りだ」


ナウマン象「そこにいるのは誰だ! さては俺を死なす気だな。負けるもんか、こいつをくらえ、こいつをくらえ」


 誰もいない場所にむかって、パンチを繰り出すナウマン象。


マルぼん「エアバトルだ」


ナウマン象「きゅう……」


ヒロシ「逝った!」


マルぼん「心臓も止まって脈もない。完全なる死だな、こりゃ」


ナウマン象「だれが逝ったって」


 いつの間にか、マルぼんとヒロシの後ろにナウマン象が立っていました。半透明で、足元なんか完全に見えなくなっているナウマン象が。当然、マルぼんたちの前にはナウマン象の亡骸があるのですが、透明ナウマン象はそれにはまるで気がつかず。


ナウマン象「それよかエアギターだエアギター」


マルぼん「エア人生だ」


 マルぼんは「フリかけ」の効果は絶大だと思いました。