マルぼんと暮らす
勉強もダメ。スポーツもダメ。外見もよろしくなく、人に好かれない。
ヒロシ「ああ。僕ってばなんでこんななんだろう。いやになっちゃうマイ人生。期待しちゃうよマイ来世」
マルぼん「勉強もスポーツも、外見も人付き合いもそれなりに努力すれば、よくなるものさ。キミはしているのかい、努力を」
ヒロシ「僕は努力とまずい飯はきらいでね。ねーマルぼん。努力しなくても、なんか色々できるようになる機密道具だしてえ」
マルぼん「そうだな。このゴーグルをかけてごらん」
言われるままゴーグルをかけるヒロシ。
ヒロシ「あ。マルぼんの頭から木が生えているように見える」
マルぼん「その木は『努力の木』なんだ。木に果物は生ってないか」
ヒロシ「小さな果物っぽいものが生っているよ」
マルぼん「それは『努力の青果』といって、がんばっている人の努力が実を結んだとき(または結びつつある時)、『努力の木』に生る果物。今マルぼんは日本国籍をとるために努力しているから、見えているのはその青果だな。キミに渡したゴーグルは、かけると『努力の木』や『努力の青果』を見たり触れたりするようになるんだ」
ヒロシ「ふうん」
マルぼん「そのゴーグルをかけると、人さまの『努力に木』に生った『努力の青果』をもいで食べることができる。『努力の青果』を食べると、がんばった成果がそっくりそのまま自分のものになる」
たとえば、日夜勉強に励んでいる人に生った『努力の青果』を食べると、たとえ全然勉強なんてしていない人でも、がんばって勉強をしている人と同じ学力をゲットできるのです。一方、『努力の青果』を食べられてしまった人は、いままでの努力は全てパー。いちからやりなおし。なんだろうこの理不尽。責任者でてこい!
ヒロシ「そういえば大脳(ヒロシのクラスメイト。秀才)のヤツ、『あっしは日夜勉強に励んでいるでヤンス。末は博士か政治家か、なんて親戚に言われているでヤンス』と自慢していたな。さぞかしすごい『努力の青果』ができていることだろう。……いただきだ」
ゴーグルをかけたヒロシは、さっそく大脳のところへ向かいました。んで。
マルぼん「首尾は?」
ヒロシ「上々さ。大脳のヤツ、家で寝ていてさ、『努力の青果』も楽勝で取れたんで、すぐに食べてやったよ。これであいつの学力は僕のものさ。がははははは。……あれ?」
マルぼん「どうした」
ヒロシ「なんだか体がだるくて……それに、とっても眠いんだ……ぐむぅ」
その後すぐに、ヒロシはかえらぬ人と相成りました。葬儀の出席者には大脳の姿が。
大脳「まさかヒロシが逝くとは……実は、あっし……死ぬつもりだったのでヤンス」
マルぼん「なんですと」
大脳「周囲の期待に答える自信がなく、死ぬつもりだったのでヤンス。ネットで毒薬(3リットル缶入り)を手に入れて、鬼のように苦かったけど、『全て飲まないと死ねないよ』ということらしいので我慢して、がんばって、とにかくがんばって飲み干したのでヤンス。いい感じで体がだるくなって、意識もなくなってきて、ああ死ぬんだとか思っていたら、目が覚めると死んでいなかったのヤンス」
マルぼん「……」
大脳「なんだかもう、色々吹っ切れて、死ぬのが馬鹿らしくなったのでヤンス。あっしは、ヒロシの分まで生きて生きて生き抜く所存でヤンス」
マルぼんは『努力の青果』の効果は絶大だと思いました。