マルぼんと暮らす 派出所自慢の巻


マルぼん「で、結局なんで新聞を読んでいるんさ」


ヒロシ「ちょっと気になる記事があって。ほら、これ」


マルぼん「なになに『お手柄野球少年』? 『23日、微笑町に住む山田太郎くんが、野球の練習中に偶然、麻薬密売組織のアジトを発見し、1人でこれを壊滅させました。町は山田太郎くんに表彰状を渡すことにしました。あと、町では『わが家に山田太郎くんの遺伝子をどうにしかて組み込み隊』『山田太郎くんを現人神と呼ぶ会』『政治力を持つ俺たちが、町名を微笑町から山田太郎町に変える様、あちこちに圧力をかける会』といったファン倶楽部が結成されたり、『山田太郎くん入り饅頭』『山田太郎くん味ゼリー』といったお土産が作られています』だって」


 記事の横には、麻薬密売組織のボスの首を掲げてポーズを決めている山田太郎くんの写真(『今度は首じゃなくてボールをかっ飛ばして、ホームラン王になりたいです』という山田太郎くんのコメントつき)が。


ヒロシ「山田太郎くんがうらやましい。僕も、こうやって大々的に誉められたいや」


マルぼん「善いことをしつこいくらいにしたら、いつか誉められるよ」


ヒロシ「今すぐ、しかも苦労せずに誉められたいんだ。この僕は。あたりまえのことをしているだけで誉められる。ただ息をしているだけで誉められるような展開が理想だな」


マルぼん「そういえば、未来の世界には『飲んだら全ての行いが、結果的に誉められるようになる薬』ってのがある。あいにくとマルぼんはもっていないんだけど、調合方法の書かれた本ならある。ほら、これ」


ヒロシ「えっと、なになに、エレクチヲン草という薬草が必要なのか。そういえば、学校の裏山に生えているという話を聞いたことがあるな。ちょっと裏山に行ってきやす」


 こうして裏山へと旅立ったヒロシですが、そのまま消息を絶ちました。地元猟友会による必死の捜索が行われましたが、まるで見つかりませんでした。そして7年後。


「裏山に野人がでるというので捕らえてみれば、狼に育てられた人間の子供だった」というニュースを聞いたマルぼんとママさんが暇つぶしに裏山に行ってみると、それは


マルぼん「ヒロシ!」


ママさん「ヒロシィ!」


 野生化してい「ヴー」とかうなっているヒロシを抱きしめるママさん。


ママさん「よく、よく生きていてくれたわ。ヒロシ、ヒロシ、ああ、ヒロシ。よくぞ生きて……」


ヒロシ「ヴー」


 マルぼんは、ヒロシがただ生きているだけで誉められるようにしてしまった『飲んだら全ての行いが、結果的に誉められるようになる薬』の効果は絶大だと思いました。