マルぼんと暮らす 「ボクは富士山に登るので」の巻


ヒロシ「ぐむーぐむー」


マルぼん「どうした。青い顔をして、汗をダラダラ流して、うなり声を発して、腹を押さえてうずくまって、まるで体調が悪いみたいだよ」


ヒロシ「悪いよ……本格的に。特に胃が、胃が鬼のように調子悪い。ぐむーぐむー」


マルぼん「あーあー。嘔吐までしちゃって。あ、そうだ、ちょうどいい。ここに薬があるんだ。胃腸の調子を良くする薬。これを飲めばいい」


 藁にもすがる勢いで、マルぼんの渡した薬を飲むヒロシ。


マルぼん「どう? 効果がでてきたんじゃないか」


ヒロシ「……わかんない。効いているような、あんまりかわんねえような」


マルぼん「はっきり言っておくれよ。効果があるのかないのか。メーカーに結果報告をする期日が迫ってんだよ。はやく言えよう。金が、金が、金が」


ヒロシ「そう言われてもよう」


マルぼん「そうだ、これを使おう。『体の声聞き取りメガホン」。これは臓器の声を聞くことができるメガホン。これで胃に薬の効果のほどを聞いてみよう」


ヒロシの胃「薬の効果っスか。すげえっス。素晴らしいっス。神っスよ、神。さっきまでの状態が嘘みたいっス。今ならば、なんでも消化できる自信があるっス。鉄でも核でもなんでもこいっス。HAHAHAHAHA!」


ヒロシ「胃自身が言っているし、薬のおかげで調子が良くなっているようだね」


 しかし数日後、ヒロシは胃の病状を急激に悪化させてかえらぬ人となったでした。「薬はすごい効果です」とメーカーに報告したマルぼんも、エライ目にあいました。


マルぼん「ちくしょう、大損だ、大損。ヒロシの胃のやろう、病状が悪いくせに、『神っス』なんて、調子の良いことばかりいいやがって」