マルぼんと住む


 ヒロシ、ボロボロになって帰宅。


ヒロシ「学校の帰り、近道をしようとしたら、その道にはよだれをたらしながら徘徊している凶暴な犬やパンツ一丁でうろついている大人、牛の頭の皮を被って踊り狂う集団など、危険な人や場所が佃煮にするほど存在したんだ。えらい目にあったよー」


マルぼん「急がば回れとよく言うだろう。たとえ遠回りでも安全な道を通るべきさ。とはいっても、キミは馬鹿だから無理か」


ヒロシ「たしかにバカだけれども」


マルぼん「ああ、そうだ。ちょうどいい機密道具があった。『道知らせ腕輪』。一見単なる腕輪に見えるけど、これはキミのような堕落した人間にピッタリな機密道具なの。まず、この腕輪に目的地を入力する。んで、身につけて外出すると、目的地までの安全な道を音声で知らせてくれるんだ。設定をいじれば、より早く目的地へ着ける道なんかも知らせてくれる」


ヒロシ「楽な道はでないの」


マルぼん「楽な道?」


ヒロシ「楽に目的地に着ける道のこと。通ると『偶然、自分の同じところへ行こうとしている知り合いの車が通りかかり、同乗させてもらえる』なんて出来事がものすごい確率で起こる道。近道より安全な道より、僕は楽な道を知りたいのさ」


マルぼん「設定をいじれば、そういう道を知らせてくれるようになるよ」


ヒロシ「なら、さっそく頼むよ」


ルナちゃん「ヒロシさん」


 最近ヒロシとおつきあいをはじめたルナちゃんがやってきました。


ヒロシ「あ、ルナちゃんじゃないか。どうしたの。もしかして、僕に会いたくなったとか。むふふふ」


ルナちゃん「別れましょう、私たち」


 翌日。町内にある自殺の名所、パラダイス岬。その岬に立つ、ヒロシ。


マルぼん「ヒロシ、はやまるなー」


ヒロシ「いや、はやまるよ……僕は、僕はこの手で最愛の人を……」


マルぼん「自首して、罪を償えばいいじゃないか!」


ヒロシ「いやだよ。たとえ罪を償おうと、それはあくまで法律上の話。生きている限り、僕は罪の意識に苦しめられるんだ。早く楽になりたい……!」


 そう言うとヒロシ、岬から海へとヒモなしバンジー敢行。マルぼんはヒロシを楽な道へと誘った『道知らせ腕輪』の効果は絶大だと思いました。