「追憶」改め「密着3ヵ月! 新人警官ドタバタ初勤務!」 5話

前回

 権田哲郎のおかあさんは開業医です。病院はそれなりに大きいので、しゅーちゅーちりょーしつとかもあります。現在しゅーちゅーちりょーしつにいるのは1人。おかあさんはメスとキスの区別もつかないヤブ医者の中のヤブ医者ですので、他の病室にも患者はいません。まぁ、病院と警察にお世話になる人は、できるだけ少ないほうがいいですからね。あははは、平和に乾杯!


 そんなしゅーちゅーちりょーしつにいる唯一の患者は、例のお椀忍者こと梨野ツブテです。室内のベッドの上で、死んでいるかのように眠っています。お椀から出てきたときに頭を打ったあの日から1年間、彼はずっと夢の中なのです。


 医療器具の音だけが響くしゅーちゅーちりょーしつに、1人の男性が入ってきました。権田哲郎のおとうさんです。ツブテの眠るベッドに近づき、土下座するおとうさん。


「許してください」


 床に頭をこすりつけながら、言いました。


「許してください」


 あの日、ツブテの潜んでいたお椀をぶん投げたおとうさんは、かなり責任を感じているのです。こうやって毎日やってきては、ツブテの前で土下座しています。365日、毎日。


「おねがいだから、夢にでてこないでください」


 どうも毎日夢でうなされているくさいです。

 
「うう…」


「?!」


「ここは…」


 おとうさんの願いが神に通じたのでしょうか、1年間の間「ウン」とも「スン」とも言わなかったツブテが、突然目覚めたのです。


「もう、朝…?」


「意識が、意識が戻ったのか、ツブテくん!」


「ツブテ…誰?」


「まさかツブテくん、記憶が……!?」


 次回は、重い十字架を背負ったおとうさんが、ツブテを伴い、彼の失われた記憶を取り戻すべく、癒しの旅にでるお話です。彼らが最初に出会うのは、無口だけどよく働く農家の息子。そんな息子を温かく見守る家族。しかし、元刑事を名乗る男が村に現れたとき、封印されていた哀しい過去が甦ってしまいます。

 
 次回「キャハ♪ 忍者とサラリーマンだらけの巡礼の旅!」お楽しみに。