マルぼんと暮らす 逃げて逃げられあいこでしょの巻


 マルぼんが外出先から帰宅すると、ヒロシがあきもせずにピコピコピコとテレビゲームの真っ最中。マルぼんが「子供は風の子と昔は言ったそうだけど、ありゃ嘘だな。嘘嘘。大嘘。だって部屋にこもってでてこないバカがここにいるもの! そもそもおまえは誰の子なんだい」と何のゲームをしているか尋ねたところ、


ヒロシ「クイズのゲームなの、これ説明書」


マルぼん「なになに『このゲームはレベルを調節できて、低いレベルでプレイすると、ヒントが山ほど出されます。高レベルでプレイするとヒントはまったく出ません』か。バカなキミは、当然低レベルのヒント山盛りでプレイしているんだろ」


ヒロシ「ふん。こう見えても僕はクイズが得意なんだ。ヒントなどほとんど必要としていないよ。ああ、このゲームもヌルくなったな」


マルぼん「それなら、未来の世界のクイズゲームをやるかい。一切のヒントが認められない、難易度の高いクイズゲームなんだ」


ヒロシ「よし、やってみよう」


 未来の世界のクイズゲームを起動するヒロシ。さっそく第一問。


第一問「『人間は全て使用済みのティッシュである』という教義でティーンエイジャーから絶大な支持を得て一気に信者数を増やしたものの、最後は集団自殺で全員が死んでしまったカルト宗教「猫にゃんにゃん犬わんわん教」。この宗教の指導者の名前は?』」


ヒロシ「む。なかなかの難問だ。そうだ、たしか『世界のカルト宗教』という本があったぞ。あれを参考にしよう」


 本棚に置かれている『世界のカルト宗教』を取ろうとするヒロシですが、手が触れようとした瞬間、『世界のカルト宗教』は消滅。


ヒロシ「え」


マルぼん「ヒントが認められないゲームだといったろ。ヒントそのものはおろか、ヒントになりそうものも、その都度なくなっていくのさ。たとえば野菜に関するクイズがでたら、身の回りにある野菜に関する本などが消えてしまう。クイズに答えることができたら消えたものは返ってくるから、自分の力だけで答えなよ」


ヒロシ「く。仕方ない」


 腕組みをして黙りこくるヒロシ。


マルぼん「どうした」


ヒロシ「たしか、なんかのテレビで観たんだよ。その宗教のこと。指導者の名前も見たんだけど、思い出せない。思い出せそうだけど、思い出せない」


 自分の記憶をヒントに、答えを導き出そうとするヒロシ。ふと、ヒロシの瞳から光が消えました。


マルぼん「おい、どうした」


ヒロシ「……?」


 不思議そうにマルぼんの顔を眺めるヒロシ。


ヒロシ「……どちら様? というか、私は、私は誰?」


 マルぼんは、ヒントもヒントになりそうなものも一切認めない、未来の世界のクイズゲームの効果は絶大だと思いました。