愛

　退社後、最寄りの駅への道中。近所の高校の制服を着た男と、ケバいＯＬ風の女という妙な２人組と一緒になった。顔見知りであるようだが、男はＯＬ風に飲酒喫煙等の悪自慢、珍妙な武勇伝を語り、「今夜うち来なよ」と口説いていた。平日やぞ。おい、平日やぞ。いいご身分でござるな！　とか内心思う。ＯＬ風も満更ではなさそうなのがにんともかんとも。

　そんなこんなで駅が近づいてきて、とある横断歩道。男は「俺が信号無視して無事にむこうまで渡れたら、今晩泊りに来い」とか言い出した。これにはＯＬ風も困惑で「やめてやめて」と止めていたが、男はそれを無視して、それなりの交通量の横断歩道で信号無視強行。

　数秒後。滑って転んで轢かれかけ、急ブレーキで停車したトラックの窓から顔を出した運転手の「てめえ〇にてえのか！」という漫画かドラマでしかみたことのない罵声を浴びせられる男の姿がそこにあった。青信号になってやってきたＯＬ風に起こされると男。その後は無言のまま駅へ……さようなら！　とか思いきや、電車で同じ車両になった。まだ無言だった。その気まずさ。やりきれなさ。