だいたいひと月前のこと。職場からの帰宅中、河川敷沿いの歩道を歩いていた時に、見知らぬおばあさんに声をかけられました。おばあさんは、僕のはるか後方を歩いているおじいさんを指さして


おばあさん「あの人は私の夫。認知症なんです。私を置いて、さきさき行ってしまって……私では追い付けないので、追いかけて止めてくれませんか」


僕「まかせてください!」

 
 ここ数年で一番の全速力でおじいさんをおいかける僕。なんとか追いついたものの、おじいさんは河に入ろうとしているではありませんか。おりからの雨で増水している河は、非常に危険な状態。「危ないです危ないです」と必死に止める僕を振り切り、河へと入ろうとするおじいさん。よくみると、おばあさんの姿も消えている。このままではマズイ。僕は携帯電話で110番に連絡。「すぐに行きます」との頼もしい返事。


 その後、警察のみなさんはビックリするほどの速さで到着。最悪の事態は免れたのです。


警察官「ご協力感謝します」


僕「それにしてもかなり早い到着ですね」


警察官「あのおじいさんの奥さんが先に通報してくれていたんです」


僕「そうですかー」


 と、その時、別の警察官が無線で話している声が聞こえました。


『さきほどの、見知らぬ若い男に認知症の夫を連れ去られたという通報ですが、無事に男性を保護しました』