通勤電車。最後尾の車両に乗っていた時のこと。まもなく発車ということで、ドアが閉まろうとする。乗車への望みを捨てない、命知らず夢追い人(高校生くらいの男性)がかけこみ乗車を試みました。しかし、車掌は彼が乗り込む前にドアを閉めることに成功。すると夢追い人が


「おかあさんが、病院に運ばれたって連絡が!!」


 と叫びました。一瞬の沈黙のあと、ドアが、開きました。ゆっくりと。その動きに、車掌の優しさが見えた気がしました。その時、夢追い人に近づく一人の中年女性。夢追い人の頭をどつくと


「あたしはここにいるやろ!!」


 ふたりをホームに置いたまま、電車のドアは閉まりました。そして何事もなかったかのように発車したのでした。