・昨日、映画を観に行ったときの話。映画の前に腹ごしらえをしようと考えたのですが、上映開始が近かったこともあって、適当な店に入りました。その店はカウンターのみ。調理をしたり接客をしたりしているスタッフさんは、いずれも僕よりも年下であろう茶髪金髪でピアス装備の若者たち。その数6人。


 「いらっしゃいませ」の声もなく、昨日のコンパだとかネット配信だとか大学が留年決定だとかの話で盛り上がりまくりのスタッフのみなさん。人生たのしいんだろうな。調理担当も配膳担当もみんなこの調子で、愉快な会話に爆笑の嵐(客はみな無言)。料理に飛んだ唾が入ってるのは確実。よくみると、調理担当は頭になにもつけてない。髪の毛は大丈夫か。よくみると調理台に灰皿が。海原雄山なら殴るぜ。配膳スタッフさん、ネイルアートの決まった指が器のなかにはいってる。デコられた猫がおぼれるぞ。


 しかし小心者の僕は、一度席に着いてしまったために出ることができません。覚悟を決めて注文(せめてもの抵抗で、一番やすいやつ)。明日からは勇気をもって生きようと決意したその時。僕の隣にいた別のお客さんがスマホをいじりはじめました、すると、リーダーらしいスタッフが、さきほどまでの笑顔が一変して無表情となり、ドスの効いた声で一言。


「あのぉ、俺らぁ、誇りをもって飯屋やってるんでぇ、絆をもって仕事をやってるんでぇ、そういうのぉ、やめてもらっていいっすかぁ。」


 店内にいたすべての客が「え!?」ってな顔をしました。何人かは小さく声を出していました。僕も、怒られたお客さんも、ほかのお客さんも、おそらく気持ちはひとつ。全員が心のなかで色々とツッコんだかと思います。あいにくとボケのスタッフさんのほうが数が多かったので、ツッコミは届かなかったかと思います。気持ちだけ美食倶楽部。そういうのもあるんだな。