・2009年10月から刊行されていた「手塚治虫文庫全集」が、2012年5月刊行分をもって配本終了。長かった。


手塚治虫文庫全集」(以下、「文庫全集」)は、「手塚治虫漫画全集」(以下、「漫画全集」)を再編集し、文庫化したもの。漫画全集にはラインナップされていなかった「ピノキオ」「バンビ」「新寶島(オリジナル版)」といった作品が新たに加えられ、一部の作品は漫画全集では掲載を見送られた話が収録されることになりました。


 全部で4期に分かれており、1期毎に購入特典として複製原画プレゼントがありました。4期全ての複製原画プレゼントに応募すると、未単行本化作品「ロマンス島」を編集した本がもらえるのです。


 最後の複製原画プレゼントの応募も完了し、残すは特典の「ロマンス島」の申し込みのみとなったわけですが、振り返ってみると、色々と不満の残る全集でした。難癖に近いものもあったりしますが、以下、不満点をまとめてみました。


●未収録作品については、あくまで漫画全集に未収録だっただけで、その多くは他のレーベル・出版社から出版された単行本には普通に収録されています。どの単行本にも収録されていない、多くの手塚ファンが読みたいであろう「ブラック・ジャック」「ミッドナイト」の未収録回なんかは華麗にスルーされており、これらの作品の収録を密かに期待していた者としては、かなりがっかりさせられました。新たに加えられた「ピノキオ」等の作品については、マニア向けの高価格でしか販売されていないものが多く、これらが気軽に(といっても1000円はするんですが)手に入るのはいいことだと思います。そういう意味では、他にもラインナップに加えて欲しい作品がたくさんありました。


●漫画全集にて刊行されていた、エッセイ集や対談集といった文章オンリーの単行本がラインナップから外れてます。漫画全集でも別巻扱いだったから、仕方ないのかもしれませんが、残念。資料としても十分価値があるものだと思うのですが。


●漫画全集全400巻(文章オンリーの単行本を除くと、全382巻)に対して、文庫全集は全200巻。巻数が半分になってます。収録作品は減っていませんので、圧縮されまくってます。例えば、「ブラック・ジャック」は漫画全集では全22巻だったのが、文庫全集では全12巻にまで圧縮されています。1冊1冊の収録数が増えたために本が分厚くなっていて、読みにくいです。


●「漫画全集」では単巻で刊行されていたにも関わらず、「文庫全集」では他の作品と抱き合わせで刊行されている作品がある。全く毛色の違う作品同士が抱き合わせされていたり、明らかにページ数を埋め合わせるために無理やり収録されたようなものがあったり、扱いの酷さに泣けてきます。マイナー作品だからって、雑な扱いをしていいってわけはありません。


●複製原画プレゼントの応募に必要な「応募券」が、カバーから切り取る仕組みになっている。仮にも、末永く本棚に置かれて、読み継がれていかなければならない全集なのにカバーにハサミを入れるのはイヤな感じです。


● 「新寶島(オリジナル版)」の解説が、大人げない。


 同時期に、国書刊行会小学館クリエイティブ復刊ドットコムから、貴重な資料をまとめた本や、メジャー作・人気作のオリジナル版(雑誌掲載時のまま)を復刻した本などが多数出版されるなど、話題をそっちに攫われたってのもありますが、正直、パッとしない全集でした。「漫画全集」の増補改訂くらいにしといたほうがよかったのではないかと思います。

 
 「ロマンス島」の出来がよければ、このがっかり感も幾分かマシにはなりそうなのですが……