小説すばる2009年2月号「あの日にタイムスリップ」


 「小説すばる」2009年2月号のコラムコーナー「あの日にタイムスリップ」、今月号は荒山徹先生が登板。毎号読んでいるわけではないのでわからないのですが、「あの日にタイムスリップ」は、過去のある1日をテーマにしたコラムコーナーの模様。荒山徹先生がテーマに選んだのは、1989年11月4日。


 隆慶一郎先生の命日であります。


 隆慶一郎先生と荒山先生の関係は深いものがあります。首だけ隆慶先生、友矩×家光、ジェイノベルで連載している「徳川家康」……各種作品から溢れでる必要以上に愛のこもったリスペクトからも、それが伺えます

 
 そんな隆先生が亡くなられたという新聞の訃報記事を目にした荒山先生、さぞかしショックなのかと思いきや


「ふーん」と思っただけでした。 (小説すばる 2009年2月号 171ページより引用)


 な、なんだってー!? あんなに愛しているにそれだけとは! あまりに非情と言えよう、荒山先生! 軽くショックを受けましたが、よく読めば、この時期の荒山徹先生(28歳。新聞社勤務)は、隆慶一郎作品を読んだことがなかったことが判明。読んでないなら仕方がない。でも、なぜ読む気になったのか。


 実は荒山先生、隆慶一郎先生は知らなくても「池田一朗」は知っていたのです。池田一朗とは、すなわち隆慶一郎隆慶一郎先生は、作家になる前、「池田一朗」の名前で時代劇の脚本をたくさん書いておられました。
荒山先生は、池田一朗脚本に子供の頃からぞっこん惚れ込んでいたほどの大ファンだったのです! 
新聞の訃報記事で大好きだった池田一朗隆慶一郎を知った荒山先生、さっそく各種隆慶作品に手を出します。
その結果・・・・・・


「そんなのありかよ! まだまだやります! の池田一朗ワールドに、三十歳目前のわたしは深く溺れ、
熱く弾け、烈しく慄いたのでした。」(小説すばる 2009年2月号 171ページより引用)


 「熱く弾け」のところがえらく気にかかりますが(弾けた結果が現状ですよ!)、とにかく隆慶作品にハマッた荒山先生は己の信じた面白さに殉じること……すなわち作家の道を志すことを決意したのです。(荒山先生曰く、「覚醒」)隆慶一郎先生の亡くなられた11月4日は、荒山徹先生にとっては自分が覚醒した「第二誕生日」である、という言葉でコラムは締めくくられていました。


 短いコラムでしたが、作家・荒山徹誕生の秘話といった感じで非常に楽しめました。ファンの贔屓目かもしれませんが、荒山先生はコラムもおもしろい。小説のほうは「鳳凰の黙示録」以外はチェックしているのですが、コラムのほうはほとんどノーチェックそれがえらく残念な気がしてきました。いつかまとめて単行本されないでしょうか。荒山先生が司馬遼太郎もびっくりな大家になれば……もしかして……